看護師の人事評価は?|スキル・成果・情意より大切なこと


看護師の人事評価では、スキル・成果・情意が重要と言われ、
多くの病院や施設がこの3つの軸で看護師を評価しようと試みています。

しかし本当にそれだけで十分なのでしょうか。

完璧なチェックリストを作り客観的な成果指標を並べても
なぜか現場の看護師たちの士気は上がらず「正しく評価されていない」という不満がくすぶり続ける。

もしあなたの組織がそんな状況にあるとすればそれは評価制度の本質を見誤っているからかもしれません。

この記事ではスキルや成果といった一般的な指標だけでは測れない看護師の「本当に大切な価値」とは何かを解き明かします。

9割の組織が陥る評価の罠を暴き院長や経営者の「看護哲学」こそが最高の評価基準になる理由とそれを制度に落とし込む具体的な方法を解説します。


【村井 庸介(むらい ようすけ)】
大学卒業後は株式会社野村総合研究所に入社し通信業・製造業の経営コンサルティングに携わる。その後リクルート、グリー、日本IBMに転職。その中でグリー株式会社にて人事制度設計に携わった。
2015年に独立後は、社員30名のベンチャー企業から5,000名を超える大企業まで幅広く人事制度設計や導入伴走に携わる。顧客業種は製造業、サービス、IT企業が中心。経営理念・事業戦略から逆算した人事制度構築を得意とする。


なぜスキル成果情意だけの看護師評価は失敗するのか

人事評価制度を導入したにもかかわらず現場が疲弊し優秀な看護師から辞めていく。

こうした悲劇はなぜ起こるのでしょうか。

それは一般的な評価軸である「スキル 成果 情意」だけを追い求める評価が看護という仕事の本質とズレているからです。

完璧な評価制度が「指示待ち看護師」を生む理由

「スキルチェックシートを完璧に埋めること」

「インシデント件数をゼロにすること」

「マニュアル通りの手順を守ること」

これら「正しい」とされる項目だけで評価を行うとどうなるでしょう。

看護師は減点されないことを最優先に考えるようになります。

患者さんの不安に寄り添うよりも先にマニュアルを開く。

チームが忙しくても自分の担当業務以外は手伝わない。

失敗を恐れて新しいケアへの挑戦を避ける。

結果としてスキルは高いかもしれないが患者さんの心には寄り添えない「指示待ち看護師」ばかりが育ってしまうのです。

他職種との違い 看護師評価たった一つの本質

看護師の仕事は工場で製品を作ったり営業が数字を上げたりする仕事とは根本的に異なります。

その本質は「感情労働」であり「チームケア」です。

患者さんやその家族の不安や苦痛を受け止め寄り添う。

医師や介護士など多職種と連携し一人の患者さんという複雑な存在に向き合う。

これらの価値は個人のスキルや成果という単純な物差しでは到底測りきることはできません。

この特殊性こそが看護師評価の最大の難しさであり最大の違いです。

この記事は「魂のケア」を取り戻すための設計図

もしあなたの病院の評価制度が看護師たちの心を置き去りにし現場を疲弊させているのなら。

それは制度が「魂」を失っている証拠です。

この記事は単なる評価テクニックの解説書ではありません。

あなたの病院が大切にしたい「魂のケア」とは何かを再定義しそれを取り戻すための「評価制度の設計図」です。

9割が陥る「正しいが誰も幸せにならない」評価の罠


多くの組織が良かれと思って導入している評価項目が実は現場の首を絞めているケースは少なくありません。

9割の組織が陥る「正しいようで間違っている」評価の罠を見ていきましょう。

成果評価という名の数字のイタチごっこ

「患者満足度アンケートの点数」

「ヒヤリハットやインシデントの件数」

「時間外労働の削減時間」

これらは客観的で分かりやすい「成果」指標に見えます。

しかしこれらの数字だけを追い求めると何が起こるか。

アンケートの点数を上げるために患者さんに迎合しすぎる。

インシデントを隠蔽し報告しなくなる。

サービス残業が横行する。

数字のための数字を追いかける「イタチごっこ」が始まり現場は疲弊し誰も幸せにならないのです。

能力評価という名の資格マウント合戦

「専門知識のテスト」 「看護技術のチェックリスト」 「資格の取得数」

これら「能力」評価も一見重要に見えます。

しかしこの評価に偏りすぎると知識や資格を持つことが目的化してしまいます。

知識は豊富だが患者さんの前では実践できない。

資格は持っているが後輩に教えようとしない。

「私は知っている」「あなたより上だ」という「資格マウント合戦」が始まりチームワークを破壊することすらあるのです。

情意評価という名の主観と思い込みの押し付け

「協調性があるか」 「責任感を持って取り組んでいるか」 「意欲的に業務を行っているか」

こうした「情意」評価は看護師の人間性を評価する上で欠かせません。

しかし最も危険な罠でもあります。

なぜなら明確な基準がないまま運用すると評価者である上司の「主観」や「思い込み」の押し付けになるからです。

「上司に気に入られている人が評価される」

そんな不信感が生まれた瞬間制度への信頼は崩壊します。

スキル成果情意より大切な「院長の看護哲学」


ではスキル 成果 情意といった一般的な指標の先にある「本当に大切なこと」とは何でしょうか。

私はそれこそが院長や経営者の持つ「看護哲学」そのものであると確信しています。

人事評価は院長の理念の結晶である

人事評価制度は単なる評価ツールではありません。

それは院長であるあなたが「何を大切にしどんな病院を創りたいのか」という理念や価値観がそのまま映し出される「鏡」です。

スタッフは評価制度という鏡を見て「この病院は何を目指しているのか」「院長は何を求めているのか」を理解します。

人事評価制度とは院長の理念の「結晶」なのです。

哲学なき評価は看護ロボットを生む

もしあなたの病院の評価制度に明確な「看護哲学」という背骨が通っていなければどうなるでしょうか。

評価はただ点数をつけ処遇を決めるための「魂のない作業」と化します。

スタッフは評価項目をクリアすることだけを考え哲学なき「看護ロボット」のようになってしまうかもしれません。

「患者さんの心」ではなく「評価シートの項目」だけを見るようになるのです。

院長の「えこひいき」が最高の看護チームを創る

私の思想の根幹には「人事評価制度は会社の法律である」という考え方があります。

そしてその法律の核心は社長(院長)が「誰をえこひいきするか」を明確にすることです。

これは個人的な好き嫌いではありません。

「我が病院は患者さんの尊厳を何よりも守る看護師をえこひいきする」 「チームのために自己犠牲を払える看護師をえこひいきする」

この院長の理念に基づいた「愛あるえこひいき」の基準こそがスタッフの行動指針となり最高の看護チームを創り上げるのです。

設計のコツ 院長の哲学を「生きた制度」に実装する


ここからはあなたの心の中にある「看護哲学」を具体的な「生きた制度」へと実装するための実践的なコツを解説します。

STEP1 院長が「理想の看護チーム物語」を創作する

設計の第一歩は評価項目を考えることではありません。

まず院長であるあなた自身が「理想の看護チームの物語」を創作してみてください。

5年後あなたの病院が地域で最も信頼され「あの病院でケアを受けられて幸せだ」と言われているとします。

その中心にいる看護チームはどのようにしてその信頼を勝ち取ったのでしょうか。

どんな困難があり彼らはどのように協力しどんな「哲学」を持って患者さんに接していたのか。

その感動的な物語を具体的に書き出すのです。

STEP2 物語のヒーロー・ヒロインを評価項目に分解する

次にその物語の「主人公」である理想の看護師の行動を具体的な「評価項目」へと分解していきます。

物語の中で主人公が取った最も賞賛すべき行動は何だったでしょうか。

「誰もが諦めかけた患者さんのわずかな変化に気づき医師に提言した」 →評価項目:「諦めない観察眼と提言力」

「忙しい中でも後輩の不安な表情を察しそっと声をかけた」 →評価項目:「チームへの共感力と支援行動」

「マニュアルにはないが患者さんが一番喜ぶ方法を考え実行した」 →評価項目:「理念に基づく主体的な実践力」

このようにあなたの「物語」があなたの病院だけの「評価項目」を教えてくれます。

STEP3 院長自らが語り部となり物語を現場に届ける

そして最も重要なのがこの「物語」と「評価項目」に込められた哲学を院長自らが「語り部」となり現場に届け続けることです。

全体会議で語り幹部会で語りそして病棟をラウンドしながら語る。

「君の今の行動はまさにうちの物語の主人公そのものだ」

院長の熱い言葉が評価制度に魂を吹き込み理念を生きた文化へと変えていくのです。

まとめ 哲学で評価し患者も職員も幸せな病院を創る

看護師の人事評価の本質はスキルや成果といった目に見えるものを測ることではありません。

それは院長の「看護哲学」という名の理念を組織の隅々にまで浸透させその理念に基づいて行動する人材を育て賞賛することなのです。

院長が明日からできるたった一つの魔法

もしあなたが今の看護評価に疑問を感じているなら明日からたった一つの「魔法」を試してみてください。

それは看護師長との会議でインシデントの件数を確認する前にこう問いかけることです。

「今週最も『我々の看護哲学』を体現した素晴らしいケアをしたスタッフは誰だった?」

その問いこそがあなたの病院の評価軸を「作業」から「哲学」へと変える小さなしかし極めて重要な第一歩となるはずです。

あなたの看護哲学を形にする戦略相談 初回無料

もしあなたが自らの「看護哲学」を言語化しそれをスタッフの心に響く「生きた評価制度」へと昇華させたいと願うならば。

ぜひ私にご相談ください。

私は単なる制度の作り方を教えるのではありません。

院長であるあなたの「想」を形にし患者さんからもスタッフからも愛され選ばれる最高の病院を創るための「物語」を共に創り上げるお手伝いをします。

あなたの病院の新たな物語が始まるその瞬間に立ち会えることを心から楽しみにしています。

人事評価制度にお困りの方は、お気軽に村井にご相談くださいね。


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